南ウラルのイスラーム聖地と墓碑銘
この画像データベースは、ロシア連邦バシコルトスタン共和国ウファ市の西約55kmのチシムィ地区にある、フセイン・ベク廟とアク・ズィラト墓地の墓石と墓碑銘の情報を写真で提供するものである。2019年9月8日に撮影された墓碑銘の写真を中心に、2019年9月7日の事前調査で撮影された写真もあわせて提示する。
中央アジアのムスリム定住社会を研究対象とする人文学研究では、スーフィー(イスラーム神秘家)等のイスラーム聖者やその墓廟をめぐる信仰の研究蓄積が極めて厚く、事実、民衆のイスラーム信仰においてスーフィズム(イスラーム神秘主義)的要素は重要な位置を占める。しかし、そうした中央アジア文化と密接な結びつきをもつロシアのムスリム集住地域、とくにヴォルガ・ウラル地域のイスラーム聖者崇敬や聖地参詣については研究が不十分であり、記録すら満足に行われていない。この画像データベースは、ヴォルガ・ウラル地域の聖者崇敬や聖地参詣の歴史学・宗教学研究、墓碑銘の文献学的研究、また墓所の考古学的研究に資料を提供し、中央ユーラシアのイスラーム文化の広がりを示すとともに、参詣地として変化する場所の記録を残すことを目的としている。
2019年9月7~8日の調査には、今松泰(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科―所属は2022年3月現在)、磯貝真澄(千葉大学大学院人文科学研究院/東北大学東北アジア研究センター)、マルスィル・N・ファルフシャートフ、ラミール・M・ブルガーコフ(ロシア科学アカデミー・ウファ連邦研究センター名誉記章勲章歴史言語文学研究所)、エヴゲーニイ・V・ルスラノフ(ロシア連邦バシコルトスタン共和国文化遺産保護局・考古遺産部)が参加した。墓碑銘の撮影者は、学術写真家のタチヤナ・K・スリナである。この調査と画像データベース公開は、JSPS科研費JP19K01033の助成を受けたものである。